米相互関税26兆円返還の最短期限到来、進出中小企業の疑問に答えるQ&A

26兆円規模の関税返還、自社の取り分を取りこぼしていないか

「うちは商社経由で輸出してるから関係ないでしょ」そう聞き流したくなる方、もう少しだけお付き合いください。2026年4月20日午前8時、米税関・国境取締局(CBP)は相互関税の返還専用システム「CAPE」を稼働させました。対象は約33万社、総額1,660億ドル、日本円でおよそ26兆円という前例のない規模です。

2026年5月時点で、フェーズ1の最短申請期限がすでに到来し始めています。問題は、対象企業の多くが「自社が当事者かどうか」さえ把握できていないこと。本記事では進出中小企業が現場で抱きやすい疑問を4つに絞り、Q&A形式で整理します。受け取れる還付金は、申請しなければ戻ってきません

そもそもなぜ返還の話になっているのか

背景を簡単に押さえます。トランプ政権は2025年4月5日、国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に「相互関税」を発動しました。日本からの輸入品にも追加関税が課され、約1年にわたって支払いが続いたのです。

ところが2026年2月20日、米連邦最高裁判所が「IEEPAに基づく関税は違法」と判断。政権は2月24日に相互関税の徴収を停止し、3月4日には国際貿易裁判所(CIT)が支払い済み関税の返還を命じました。CBPはこれを受けて還付システムCAPEを4月20日に立ち上げた、という流れです。

ジェトロ・日本経済新聞報道(2026年4月時点)によれば、対象は約33万社・1,660億ドル(約26兆円)。輸入申告約5,300万件のうち、フェーズ1で約6割が処理対象とされています。

中小企業が現場で抱える4つの疑問

Q1. うちのような中小企業も還付対象になるのか

結論から言えば、記録輸入者(Importer of Record)として米国で輸入申告を行った主体が対象です。多くの日本中小企業はDDP条件で米国法人や現地子会社を介して輸出しているか、現地代理店が記録輸入者になっています。

つまり実際にCAPEで申請するのは、米国法人や子会社、または現地通関業者です。ただし、関税負担を実質的に肩代わりしてきた日本側に還付金が回るかどうかは、契約と社内ルール次第。「現地で勝手に申請されたが還付金がこちらに戻ってこない」というトラブルを避けるため、社内で誰が申請主体かを今のうちに確認しておく必要があります。

Q2. 期限はいつまでに何をすればいいのか

フェーズ1の対象は「未清算(unliquidated)の輸入申告」と「清算後80日以内の申告」の2種類。米国の通関では申告から清算(liquidation)まで標準で約314日かかるため、相互関税発動の2025年4月5日から314+80=394日目、つまり2026年5月上旬がフェーズ1の最短期限の目安とされています。

ということは、2025年4月5日直後に支払った相互関税については、すでに申請期限が到来している案件が出始めているのが現状です。本記事公開日の2026年5月時点では、4月発動から1か月強の輸入申告がフェーズ1の処理対象に順次入っていきます。複雑な案件はフェーズ2以降に回されますが、フェーズ2の運用詳細はまだ公表されていません。

注意点
申請が遅れて80日の猶予を逃すと、フェーズ2に回るか、最悪の場合は還付対象から外れる可能性があります。すでに支払った関税の請求書・通関書類を社内で総ざらいするのが先決です。

Q3. どうやって申請するのか

申請ルートは3つの要素が前提になります。

  1. 米CBPの自動商取引環境(ACE)アカウントが有効であること
  2. 申請者が米国に拠点を持つ記録輸入者または通関業者(カスタムズブローカー)であること
  3. 還付金の振込先となる米国銀行口座が登録済みであること

つまり日本の本社がCAPEに直接ログインして申請することはできません。米国子会社か、現地で長く付き合っている通関業者を通じて手続きすることになります。通関業者によっては成功報酬型の還付サポートを案内しているので、複数社の見積もりを比較するのが現実的でしょう。

申請時には、輸入申告番号(Entry Summary)、HSコード、支払った関税額、ACEアカウント情報が必要です。社内のCFO・通関担当・現地法人の三者で書類を共有できる体制を作ると、判断スピードが上がります。CBPは追加審査が不要な案件であれば、申請受理から60〜90日以内に利息込みで返還するとアナウンスしています。

Q4. 還付が政権の動きで止まることはないのか

これは最大の不確実性です。トランプ政権は最高裁判決を受けつつも、2026年2月24日付で1974年通商法第122条に基づく「全世界一律10%の従価税」を発動しました。122条は150日が上限なので、2026年7月24日に失効する設計です。

つまり今は「IEEPAは違法だから返還、しかし122条は合法だから10%は残る」という二重構造。さらに政権が還付プロセスの停止を裁判所に申し立てる可能性も指摘されています。法的な揺り戻しが起きても、すでに申請済みの案件が優先処理される可能性が高いと見られていますが、保証はありません。

つまり「動ける今のうちに申請を済ませておく」のが最も安全策。様子見は機会損失につながります。

中小企業が今週から動くべき5つのアクション

  • 2025年4月以降の対米輸出について、関税支払い実績を月次で棚卸しする。記録輸入者・通関業者・支払い金額の3点を整理します。
  • 米国法人または通関業者にCAPE申請の進捗を確認する。すでに動いているか、必要書類は揃っているか、追加で社内資料が必要か。
  • 還付金の社内帰属ルールを決める。米国子会社の口座に入金されたあと、本社・サプライヤーへどう配分するかを契約と税務で点検します。
  • 122条10%関税の終了予定(2026年7月24日)以降の関税スキーム変化に備える。新たな関税根拠が出る前提で、価格改定とリードタイムを再設計します。
  • 経済産業省「米国関税対策ワンストップポータル」を定期巡回する。中小企業向け補助金・相談窓口情報が随時更新されます。

まとめ

  • 米CBPは2026年4月20日にCAPEを稼働、対象は33万社・約26兆円規模。
  • フェーズ1の最短申請期限は2026年5月上旬から到来済み。動ける案件から順次申請するのが現実解。
  • 申請主体は米国法人または通関業者。日本本社は契約と還付金の帰属ルールで連携する。
  • 122条10%関税は2026年7月24日まで。次の関税スキームを見越した価格・調達戦略の再点検が必要。

関税は黙って払うものではなく、戻せるものは戻す。それが2026年の対米取引で利益を守る基本姿勢になります

参考情報源