海外営業員のリスクマネジメントについて

リスクマネージメントとは何かと考えた時、日本では一般的に危機管理と思われがちですが、実際はそう単純なものではなく、以下のようにいくつかに分類されます。

  • ハザード–損失の原因となるもの・兆候
  • ペリル–損失そのもの
  • リスク–損失の可能性・想像を大きく超える可能性

ここでは海外営業の業務を遂行する上で直面するリスク、その対策について述べてみたいと思います。日本国内の営業活動と違い、海外営業のリスクは数倍も多く、またその強度も大きくなります。事前の情報と万全の対策が大きな結果の差を齎す事は間違いありません。

2026年現在、米中対立・ロシア・ウクライナ問題・中東情勢の緊迫化・気候変動による自然災害の激甚化など、海外営業パーソンを取り巻くリスクの種類と複雑さはかつてない水準に達しています。「自分の担当地域は大丈夫」という根拠のない楽観は、最も危険なリスク要因の1つです。

海外営業リスクの特徴

海外営業リスクの特徴として、日本でのリスクにプラスして起こるリスク、海賊・戦争・内乱・暴動などが挙げられます。日本のリスクとその質が違い、政治・経済・宗教・文化・格差・地勢・法律・天候・環境に、根の深い、常識では対策の難しいリスクが多数存在しています。

リスクマネージメントについて考える時、第一段階としてリスクの洗い出しを行います。海外の場合、その対象地域によってリスクが大きく異なります。細分化して洗い出しします。

リスクマネージメント・リスク要素の洗い出しの例

リスクマネージメントの第一歩は洗い出し作業です。その後に、頻度・強度別に分類して整理します。

  • 財産損失リスク–天災・政情
  • 収入減少リスク–コピー商品・電力不足
  • 賠償責任リスク–訴訟・圧力団体
  • 人的損失リスク–従業員の転職・自殺・交通事故
  • ビジネスリスク–国によって大きく異なる
  • 地政学リスク–米中対立・関税政策・経済制裁(2026年現在)
  • サイバーセキュリティリスク–情報漏洩・ランサムウェア・フィッシング詐欺(2026年現在)

海外営業部門の不安要素

健康・医療は大丈夫か?

各地を短期で転々とする、長期滞在・駐在、何れも健康問題とは無縁ではありません。身近な問題は持病の悪化。短期出張組には、長時間の飛行機による腰痛やエコノミークラス症候群・ウォシュレットのない環境での痔の悪化などが目立ちます。また、駐在・長期滞在組には、疾病などだけでなく、慣れない環境での仕事・家庭の問題やストレスに起因する心身症・うつ病にかかる人も見られます。本人だけでなく周囲からのケアが大切です。

2026年現在、コロナ禍以降のメンタルヘルスへの関心の高まりを受け、海外赴任者向けのオンラインカウンセリングサービスが普及しています。「弱音を吐けない」という海外営業パーソン特有のプレッシャーを自覚し、早めにSOSを出せる環境を整えておくことが、長期的なパフォーマンス維持の鍵です。

子女教育は大丈夫か?

長期で家を空ける出張員・家族で移住する駐在員にとって、家族を大切にすること・子女の教育は極めて重要な問題です。日本人学校にするのか、現地の学校にするのか、言葉の教育は、子供の将来・人間形成への影響はどうなるのか、日本との教育格差はどのくらいなのか、住む場所はどうするのか、考え出せば不安は尽きません。2026年現在、オンライン学習ツールの充実により教育の選択肢は広がっていますが、子供の年齢・滞在期間・帰国後の進学プランを踏まえた総合的な判断が求められます。

安全な生活はできるのか?

テロを始めとして急激な国際情勢の変化が起こる近年、安全対策は海外営業に従事する人々・送り出す企業にとって欠かせない仕事の1つになりました。そんなこと起こるわけないとタカを括るのは危険です。2026年現在、地政学リスクの多極化・サイバー攻撃の日常化・気候変動による自然災害の激甚化が重なり、かつては「安全」とされていた地域でも突発的なリスクが顕在化するケースが増えています。外務省の「海外安全情報」・企業のBCP(事業継続計画)の整備・緊急連絡体制の確立が、海外営業部門の最低限のセーフティネットです。

年金・社会保険はどうなってしまうのか?

海外営業に付き物の転勤や長期出張。自分の社会保険はどうなってしまうのか? 将来の年金が減ってしまうことがないように、万全の準備・制度の理解が不可欠です。出て行く人・送り出す人、双方が制度をきちんと理解し納得していない場合、後で取り返しのつかないことになりかねません。企業も人道的にその社員の損失分の負担をしなければなりません。2026年現在、老後の年金不安・物価上昇・円安による資産目減りへの懸念が高まる中、海外勤務中の年金・社会保険対策は、赴任前に専門家を交えて必ず確認すべき最重要事項の1つです。