貿易コンプライアンス

食品の産地偽装・賞味期限改ざん等、モラルハザードが大きなニュースになっています。牛肉から始まり、和菓子、ウナギまで納まる気配がありません。人体に有害なものから、そうでもないもの、様々ありますが、利益優先で消費者を無視してきたことに変わりはありません。

2026年現在、AIを活用した産地偽装・品質不正の摘発技術が進歩する一方、不正の手口もより巧妙化しています。また、SNSによる情報拡散のスピードが増した結果、一度の不正が企業ブランドを瞬時に崩壊させるリスクはかつてより格段に高まっています。

法令順守、最近ではコンプライアンスという言葉をよく耳にします。コンプライアンスの語源はcomply with another’s wish(他の人々の願いに応える)と言われており、他の人々の期待に応えることであるとされています。法に触れていないのだからいいじゃないかの枠を超え、人々の願いに適う活動・精神を求めた言葉ということができます。では、海外営業にポイントを絞った場合、つまり、日本からモノ・技術・サービスを海外に輸出し、その販売を行なう場合、コンプライアンス目線からの人々の願いとは何でしょうか?

守るべき海外営業のコンプライアンス

各国の規制を守り、文化を尊重し、消費者の信頼を裏切らないこと、そして社会(世界)に貢献すること、海外営業部門のコンプライアンスの原点です。そして最近では、その輸出・販売プロセスにおけるコンプライアンス・輸出管理体制が益々厳しく問われるようになりました。輸出管理とは、一部の貨物・技術の輸出について、経済産業省で事前に許可・承認を得た上で、輸出手続を行うことです。この輸出管理は貿易コンプライアンスとも言われ、この重要性を正しく認識せず、輸出許可が必要であるにも関わらず無許可で輸出をした場合には、法律に基づき刑事罰や輸出禁止などの行政制裁が課せられ、ブランド崩壊・信用低下を招き、企業価値に大きな損害を被ることになります。シンガポールの子会社などから迂回輸出をしても同じことです。大企業であれ、中小企業であれ、コンプライアンス・リスクマネージメント専門部署が在ろうが無かろうが、守るべき海外営業のコンプライアンス、それが輸出管理なのです。

2026年現在、経済安全保障推進法の施行・米国EARの適用強化・国際的な多国間輸出管理体制の変化により、日本企業に求められる輸出管理の水準はかつてなく高くなっています。「自分の会社には関係ない」という認識は、最も危険なコンプライアンスリスクの1つです。

輸出管理(安全保障貿易管理)とは何か?

海外営業パーソンが必ず知らなければならない知識が安全保障貿易管理制度。自分の経済活動の結果が平和を脅かす。そんなことがあってはなりません。輸出管理とは、海外営業・貿易部門などが整備すべき自主管理体制のことを意味しています。簡潔に言えば、大量破壊兵器(核兵器や化学兵器など)の開発に転用できる製品・技術の輸出を管理する体制の事です。制度の名称は安全保障貿易管理制度と言い、経済産業省が管轄しています。

2026年現在、経済安全保障推進法(2022年施行)の下、先端半導体・量子技術・AI・バイオ技術など「特定重要技術」の管理がより厳格化されています。自社の製品・技術が特定重要技術に該当するか否かの確認は、輸出管理体制整備の出発点です。

輸出管理とはどんな法律によるものなの?

大元になる法律は外国為替及び外国貿易法(通称:外為法)です。規制対象は、貨物と役務があり、それぞれ、貨物=48条(輸出貿易管理令)・役務=25条(外国為替令)によって規制されています。その輸出貿易管理令と外国為替令のそれぞれに、リスト規制とキャッチオール規制があります。(他にも関連する省令や通達等(おそれ省令・おそれ告示等)が存在しますが、ここでは詳しいご説明は省略します。)

外為法の内容

貨物48条輸出貿易管理令

  • 別表第1(1~15項)(リスト規制と呼ばれる)
  • 別表第1(16項)(キャッチオール規制と呼ばれる)

役務25条外国為替令

  • 別表(1~15項)(リスト規制と呼ばれる)
  • 別表(16項)(キャッチオール規制と呼ばれる)

EAR規制とはどんな法律なの?

日本はアメリカの同盟国として、アメリカ版輸出管理であるExport Administration Regulations(EAR)への対応を求められる場合があります。原則的には、輸出企業がコンプライアンスの一環として自主的に行なうものですが、EAR規制に基づく輸出許可取得等の手続きを行わずに第三国に対象品目を輸出してしまった場合の不利益(違反者リストへの掲載)を避けるためにも、必要最低限の確認だけは行なっておきましょう。

2026年現在、EARのフォーリン・ダイレクト・プロダクト・ルール(FDPR)の適用範囲が拡大されており、米国技術・ソフトウェアを使用した日本製品であっても、特定の仕向国・エンティティ向けの取引は規制対象となるケースが増えています。自社製品・調達部品・製造設備にEAR規制品目が含まれていないかの定期的な確認体制の構築が急務です。

輸出は自己責任!判断責任は輸出者自身にある!

  • ルールを知らなかった
  • 高度な技術を用いたものではなく、許可不要と思った
  • 能力・知識・意識のない会社の間違った判定結果を鵜呑みにした
  • 意味も理解せずに前任者から受け継いだだけ
  • 海外子会社への輸出は許可が不要と思った

それらは全て間違いです。内部統制・コンプライアンス体制を整えましょう! 日本人が魂を込めて作り、売った製品が日本を狙う核ミサイルとなり、世界に拡散する、、そんな悲劇を起こしてはなりません。

2026年現在、北朝鮮を仕向地とするすべての品目の輸出禁止措置に加え、ロシア・ベラルーシ向けの輸出規制も大幅に強化されています。海外からの迂回・間接的な流出を含めて、全て問題となる可能性があります。輸出企業は更に気をつけて管理をするようにしてください。また、輸出管理関連の政令は頻繁に更新が行われます。規制対象品目リストの改正についての最新情報は、経済産業省またはCISTEC(安全保障貿易情報センター)にご確認ください。

※ 輸出管理・安全保障貿易管理の最新情報は、経済産業省(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/)およびCISTEC(https://www.cistec.or.jp/)の公式サイトで定期的にご確認ください。