「Made in Japan」はどこまで表示できるのか?

原産国をどことするのかの定義は業界・製品によって様々で、現代の複雑な商流事情の下、地域協定別・業界別のそれぞれの基準があり、国際化された統一ルールはありません。本来、原産国表示は、管理のために行なわれるものです。例えば、非特恵分野なら、貿易統計データを収集したり、数量制限をしたり、特恵分野なら、特定の地域からの輸入品に優遇税制を適用したりするなどです。しかし厄介なのが企業イメージ原産国イメージです。

原産国表示は、ブランド力が弱い中小企業の海外営業パーソンの悩みのタネのひとつで、「日本製と言っておけば高く売れる」、その逆、「価格が高いので日本製と言わないと売れない」、「材料をフランス製というと高級に聞こえる」など、イメージの問題が付きまとうのです。「Made in Japan は値段が高いが品質が良い」、「日本ブランドでも中国製であればコピー商品かもしれない」、「日本企業なら日本製を持ってこい」という考えが世界の多くのバイヤー・ユーザーの中に漠然と存在する以上、その事実とどう向き合うかは海外営業パーソンにとって重要な課題です。

2026年現在、米中対立・経済安全保障の観点から「どこで作られたか」への消費者・バイヤーの関心はかつてなく高まっています。特に欧米市場では、サプライチェーンの透明性・人権デュー・ディリジェンスへの対応が取引条件に含まれるケースが増えており、原産国表示はコンプライアンスの問題としても捉える必要があります。

例えば冷蔵庫が、東京工場で、部品を全て中国から輸入、設計も組立ても台湾人のスタッフが行ない、インド系の商社によって横浜から輸出されました、、さて、これは日本製でしょうか? 国としては、関税の区分けを行う為だったり、様々な事情で正確な原産国表示が必要であり、消費者にとっての本質はどこの会社の設計・品質管理下にあるかが最も重要なわけです。海外の消費者から見れば、外国企業である日本企業の情報、特に中小企業の情報は多くない分、原産国イメージが先立つのが現状です。当然この場合は製品は日本製になります。

どうなったら日本製なのか?

日本では公正取引委員会が定める、景品表示法第4条第1項第3号の規定に基づく告示である商品の原産国に関する不当な表示(昭和48年公正取引委員会告示第12号)にて、商品の原産国の不当表示について規定しています。また「関税法」にて、原産地について「直接もしくは間接に偽った表示または誤認を生じさせる表示がされている外国貨物については輸入を許可しない」と定められており、紛らわしい誤解を与えるような表示を禁止しています(日本国内で販売される製品の原産国表示そのものの義務については、製品により別の法律により規定される)。つまり、日本企業の中国生産品などの「紛らわしい表示」がされている場合には、購買者の誤認を防ぐために原産地の表示が求められるという解釈が一般的です。

原産国認定は諸説ありますが「商品の原産国に関する不当な表示」の告示の場合「原産国」とは、その商品の内容について実質的な変更をもたらす行為(実質的変更行為)が行われた国をいうとされています。つまり、例えばテレビならば、その製品がテレビとして実質的な性能を備えた瞬間にどこの国にあったかということです。工業製品の場合、中国で生産し、日本で最終検査をすることで日本製を謳うケースが見られますが、その製品は中国製と表示するのが正しいでしょう。この辺りをグレーゾーン表示しているケースが結構あります。

2026年現在、グレーゾーン表示に対する各国の規制当局の取締りは強化されています。特に米国のFTC(連邦取引委員会)による「Made in USA」表示規制・EUの原産地表示規則の厳格化は、日本の中小企業にとっても対岸の火事ではありません。輸出先の国の原産国表示規制を事前に確認することが、ブランド毀損・法的リスク回避の第一歩です。

最も統一ルールに近い存在、WTOは?

WTOルールの原産地規則によれば、完全生産基準:特定の一国で産品(鉱物・動植物・水産物等)が完全生産される場合は、当該完全生産国が原産地、実質的変更基準:産品の生産が2カ国以上に渡る場合は原産地は実質的な変更が行われた国とされています。

実質的な変更が行われる原産地とは「実質的な変更をもたらし(HSコードが変わるような)、新しい特性を与える行為を最後に行った国」とされる、とされています。よって、この解釈でも、単なる部品組立・混合・切断・仕分・改装・ラベル貼付・瓶詰・検査等は「実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為」には該当しないので、これらの工程が行われた国に原産地は与えられない、と考えられます。

2026年現在、WTO体制の機能低下が続く中、各国・地域ブロックが独自の原産地規則を強化する動きが加速しています。WTOルールはあくまでも最低限の共通基準であり、実際の取引においては輸出先の国・適用協定・相手国の税関当局の解釈を個別に確認することが不可欠です。複雑な判断が求められる場合は、通関士・貿易専門の弁護士・ジェトロへの相談を積極的に活用しましょう。