BRICsの1つ、ロシアとのビジネスはどうでしょうか?原油高の時代、中国に次ぐ凄まじい経済成長を遂げたロシア。世界の1/9、東西で11時間の時差を持つ広大な国土、世界2位の石油、1位の天然ガスを持つ資源大国であり、軍事、先進科学技術、文化大国でもあるユーラシアの強国、ヨーロッパでもなくアジアでもない、近くて遠い国、ロシアビジネスとは一体どういうものなのでしょうか?
2008年5月、メドヴェジェフ新大統領が就任し(プーチン前大統領は当時首相に就任)ロシアは新時代を迎えました。原油高を背景に経済成長を拡大させ、消費財市場の確立が進み、ショッピングモール、ハイパーマーケットが次々と建設され、ゴルブシカ電気街のような巨大家電市場も降盛を極めています。更に高層マンション、モスクワシティの高層ビル群、ロシアタワー、シェレメチェヴォ国際空港の第三ターミナル、新興住宅地と建設ラッシュが続いています。
ロシアのGDPは過去10年でおよそ6倍となり、2007年実績では、1人当たり15,000ドルに迫る勢いです(モスクワの所得水準は全国平均の2~4倍)。その経済ファンダメンタルズは強固であり、安定化基金、外貨準備高も急激に膨らんでいます。現在のロシア経済は、労働集約型、安い労働力を背景に外資を誘致し成長を遂げた経済とは異なり、原油を中心とした資源戦略を背景にした成長、中産階級が拡大した高コストな消費市場であるところが特長です。現在は金融危機と原油安で大変な不景気ではありますが、旧式のライフスタイルは急激に変化し、大衆消費社会化の道を進んでいます。
2012年5月、プーチン前大統領がロシア連邦大統領に返り咲きました。メドベージェフ氏が首相に就任し、ちょうど入れ替わりとなりました。強かであり、強権政治の雰囲気も漂うプーチン氏が、再びロシアの最高指導者となったことで、一層の国力強化に向けた強い主導権が発揮されることになるでしょう。
中国が外資の選別を始め、加工貿易優遇、低付加価値生産からの脱却を目指す中、ロシアでも独自の重点産業育成を掲げ、数千億円、数兆円という規模の莫大な予算を投資しています。航空・宇宙、造船、電子、原発、輸送・発電機械、金属・木材加工、軍需工業などがその分野です。ただ、日本との間には領土問題などもあり、日本企業が政府のバックアップのもとに開発に参戦することは難しいのかもしれません。
経済成長と共に、日露の貿易は自動車を中心に増加の一途を辿っています。ロシアでは日本製品(メイド・イン・ジャパン)は大変な人気があます。日本人、日本品質への信頼感がロシア人の根底にあるようです。りんごなどの生鮮食品を始め、レストラン、化粧品、家具、建材、自動車部品、工作機械など様々な日本製品、サービスが市場進出しています。
日本や中国などとは異なり、工場立地、工業団地が殆ど整備されておらず、インフラ面ではまだ何も無いに等しい状況です(2008年現在)。用地取得手続きも大変な煩雑さであり、国策として外資の誘致をやる気があるようには思えません。また、国土は広大ですが、人口は少なく(1.5億人弱)、工場を建てても人がいないという状況にもなりかねません。また、博士クラスの技術者は低コストで豊富なのですが、生産部門を仕切れる管理職クラスの能力を持った人材は殆どおらず、基礎的な教育から手がけなくてはならないのが難点です。
ロシアのビジネス環境リスクは多数存在します。中国同様の「官」、「バブル」リスクの他、資源価格、国際政治情勢、コスト高騰、労働力不足などが存在します。また、大国でありながらも途上国のようなリスク、非効率な官僚主義、許認可の煩雑さ、ロジスティックの未整備(2008年現在で高速道路が無い)、法制度・司法の不安定さ、汚職なども存在します。個別に取引においてはNOと言わない国民性、ある意味日本に似ていますが、どのように付き合うのかを悩まされることも多いでしょう。言語はロシア語が基本、英語は国際競争に晒されているIT系エンジニアやごく一部の人が話しますが、英語を話せる人が上級者であるとは限りません。
高速道路が無く、鉄道は料金が割高です。線路幅は欧州と異なり連結できない状態。大規模な装備のある港湾も無く、通関も担当者によって扱いが異なり一貫性がありません。また、乙中も通関から倉庫までの配送など一環したサービスを提供できる業者は殆ど存在しません。
ロシアには100万人都市が13箇所あり、モスクワ、サンクトペテルブルグを中心に、平均賃金の高いウラル、シベリア、極東、人口密度が高いヴォルガ、ウラル、南ロシアを攻めると効果的です。地場の見本市、欧州、中国での展示会を活用し、ロシア企業と接触することになります。
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