インコタームズ2020の図解とFCA・CIF・DDPの確認要点

インコタームズとは、国際取引で「どこまでを売主が負担し、どこからを買主が負担するか」をそろえるための貿易条件です。海外営業担当者にとって大事なのは、用語を暗記することではありません。見積金額、保険、輸送中の事故、通関書類、納期回答の前提を、商談の早い段階でそろえることです。

2026年現在、実務で使う基本は Incoterms 2020 です。契約書や見積書に書くときは、単に「FOB」や「CIF」とだけ書かず、たとえば「FOB Shanghai Incoterms 2020」のように、場所と版を合わせて書きます。ここが曖昧だと、運賃が上がった時や貨物事故が起きた時に、誰が負担するのかで揉めやすくなります。

インコタームズの見方

営業担当が最初に見る三つの軸

インコタームズを見る時は、最初に三つだけ確認します。第一に、輸送費をどちらが負担するか。第二に、貨物が壊れた時の危険がどこで移るか。第三に、輸出入通関を誰が担当するかです。この三つが分かれば、見積の出し方と顧客への説明がかなり安定します。

  • 費用負担: 運賃、保険料、積込み費、輸入側費用を誰が持つか
  • 危険負担: 貨物事故の責任がどこで売主から買主へ移るか
  • 通関担当: 輸出通関と輸入通関をどちらが進めるか

よくある失敗は、費用負担と危険負担を同じだと思い込むことです。CIFやCIPでは、売主が輸送費や保険料を手配しても、危険が移る時点は別に考えます。営業担当者は「送料込みです」と説明するだけで終えず、危険移転の時点も確認しておく必要があります。

主要11条件の早見

見積前に使う簡易分類

Incoterms 2020には11の規則があります。営業現場では、まず「どの輸送手段でも使いやすい条件」と「海上輸送向けの条件」に分けて見ると理解しやすくなります。細かな解釈は契約書、フォワーダー、法務担当と確認しますが、見積前の会話では次の分類を押さえておくと十分です。

  • どの輸送手段でも使う条件: EXW、FCA、CPT、CIP、DAP、DPU、DDP
  • 海上輸送・内陸水路向けの条件: FAS、FOB、CFR、CIF
  • コンテナ貨物で確認が必要な条件: FOB、CFR、CIF
  • 売主負担が大きくなりやすい条件: DAP、DPU、DDP

ラッコキーワードでは「インコタームズ 図解」「インコタームズ FCA」「インコタームズ DDP」のような検索が多く見られます。これは、読者が規則の全文よりも、自分の見積でどの条件を選べばよいかを知りたいからです。このページでも、暗記表ではなく、営業担当者が迷いやすい条件を中心に整理します。

費用と危険移転の比較

よく使う条件の見分け方

図で考えるなら、確認する流れは「売主の工場、運送人への引渡し、船積み、指定港、顧客の指定地」です。どの地点で費用と危険が移るかを見れば、顧客への説明がしやすくなります。

  • FCA: 売主が指定場所で運送人へ渡す条件。コンテナ輸送ではFOBより実態に合うことが多い
  • FOB: 本船へ積み込む海上輸送向け条件。コンテナ貨物では引渡し実態とのずれを確認する
  • CIF: 売主が運賃と保険を手配する海上輸送向け条件。危険移転と費用負担を分けて説明する
  • CIP: 売主が輸送費と保険を手配する条件。CIFより保険条件が手厚くなりやすい
  • DAP: 売主が指定地まで届ける条件。輸入通関、関税、輸入税は原則として買主側で確認する
  • DDP: 売主が輸入通関や関税まで負担する条件。現地登録や規制を確認できない国では慎重に扱う

この比較は、正式な契約判断を代わりに行うものではありません。実際の契約では、商品、輸送方法、指定場所、保険条件、通関担当、相手国の制度を合わせて確認します。海外営業担当者は、見積前の会話でこの比較を使い、曖昧な条件を社内確認へ回すことが大切です。

FCAとFOBの違い

コンテナ輸送で迷いやすい条件

FCAは、指定場所で運送人へ貨物を引き渡す条件です。コンテナ輸送では、工場、倉庫、コンテナヤード、フォワーダー指定場所など、実際の引渡し地点が商談ごとに変わります。売主施設で引き渡す場合は、通常、売主が積込みまで見ることになります。

FOBは、船積みを前提にした条件として知られています。昔から使われているため顧客に通じやすい一方、コンテナ貨物では実際の引渡し地点と責任の説明がずれやすくなります。海外営業の現場では、顧客がFOBと言っていても、本当にFOBでよいのか、FCAのほうが実態に合うのかを確認する場面があります。

CIFとCIPの違い

保険条件まで含めた見積確認

CIFは、売主が指定港までの運賃と保険を手配する条件です。海上輸送の商談では今もよく使われます。ただし、保険を手配することと、すべての事故責任を売主が最後まで負うことは同じではありません。危険がどこで移るかを、顧客と別に確認する必要があります。

CIPは、指定地までの輸送費と保険料を売主が負担する条件です。Incoterms 2020では、CIPの保険条件がCIFより手厚くなる点が重要です。高額機械、精密部品、代替が難しい部材では、保険条件を曖昧にすると、事故時の回収や再出荷の説明が難しくなります。

DAPとDDPの注意点

輸入側費用で止まりやすい商談

DAPは、指定地まで届ける条件ですが、輸入通関や関税は原則として買主側の負担です。顧客から見ると「届けてもらえる条件」に見えますが、輸入時の税金、通関手数料、保管料が残ることがあります。見積書では、現地で顧客が負担する費用をはっきり分けておきます。

DDPは、売主が輸入通関や関税まで含めて負担する条件です。顧客には分かりやすい一方、売主側の負担とリスクは大きくなります。現地の税制、輸入者登録、規制、配送先条件を確認できないままDDPを受けると、採算が崩れることがあります。初めての国や初めての商品では、DDPを安易に約束しないほうが安全です。

見積前の確認事項

顧客へ聞く順番

インコタームズは、見積の最後に付ける記号ではありません。見積前に確認する前提です。営業担当者は、顧客へ次の順番で聞くと、社内の物流、貿易、経理、法務へ情報を渡しやすくなります。

  1. 希望する引渡し場所
  2. 輸送手配をどちらが行うか
  3. 保険をどちらが手配するか
  4. 輸入通関と関税をどちらが負担するか
  5. 見積に含める費用と含めない費用
  6. 契約書や注文書に記載するインコタームズの版

この確認をしないまま価格だけを出すと、あとから「運賃込みのつもりだった」「保険も入っていると思った」「輸入税まで含むと思った」という認識違いが起きます。見積書には、条件名、指定場所、版、含まれる費用、含まれない費用を一緒に残すことが大切です。

社内で共有する営業メモ

価格改定と納期回答の前提

海外営業では、運賃、保険料、燃料費、為替、現地費用が動きます。インコタームズを社内メモに残しておくと、価格改定や納期遅れの説明がしやすくなります。特に、FCA、CIF、CIP、DAP、DDPは、見積金額に含まれる費用が大きく変わります。

  • 商品名、数量、出荷予定日
  • 希望インコタームズと指定場所
  • 運賃、保険、通関、関税の負担範囲
  • 顧客が希望する納品場所
  • フォワーダー、保険会社、通関業者への確認事項

インコタームズを正しく使う目的は、相手を論破することではありません。営業担当者、顧客、物流担当、経理担当が同じ前提で話せるようにすることです。条件を早めにそろえるほど、見積後の手戻りは減り、顧客への説明も落ち着きます。

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