EUメルコスール協定で南米営業は何を変えるべきか

EUメルコスール協定の営業インパクト
2026年5月15日時点で、南米向けの営業計画を立てる企業は、EUメルコスール協定を無視しにくくなっています。欧州委員会は、同協定が2026年5月1日から暫定適用され、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイを含む南米側との間で、合計約7億人の取引圏をつくると説明しています。日本企業に直接適用される協定ではありませんが、欧州企業の価格条件や提案速度が変わるため、南米営業の競争条件を見直す材料になります。
特に注意したいのは、協定をニュースとして眺めるだけで終わらせないことです。商談現場では、相手企業が比較する候補に欧州サプライヤーが入りやすくなります。営業側は、単に日本製の品質を説明するのではなく、納期、保守、現地パートナー、代替調達まで含めて、総コストで負けない提案を作る必要があります。
暫定適用で変わる比較軸
欧州委員会の説明では、工業製品では自動車、機械、医薬品などの関税負担が下がるとされています。例えば、機械は従来14から20パーセントの関税がかかる品目があり、医薬品も最大14パーセントの関税が示されています。これらはEU企業側の数字ですが、南米の買い手から見ると、欧州品の見積もりが以前より比較しやすくなるという意味を持ちます。
| 確認項目 | 営業で見るべき点 | 日本企業の対応 |
|---|---|---|
| 関税差 | 欧州品との見積差 | 本体価格だけでなく保守費を含める |
| 納期 | 欧州倉庫からの供給速度 | 在庫拠点と代替輸送を示す |
| 政府調達 | 入札参加条件の変化 | 現地代理店との役割分担を明確にする |
南米向け営業で先に確認すること
既存顧客の競合比較
まず見るべきなのは、新規開拓先ではなく既存顧客です。すでに取引がある顧客ほど、次の更新や増設で他社見積もりを取りやすくなります。営業担当は、過去の購入理由を聞き直し、価格以外に評価されていた要素を整理しましょう。たとえば、故障時の対応、日本語での技術説明、部品供給の確実性などです。こうした要素を文書化しておくと、値下げだけに引きずられにくくなります。
- 過去の受注理由を営業メモから拾い直す
- 欧州サプライヤーと比較される品目を分類する
- 更新時期が近い顧客から条件を聞く
原産地と調達説明
協定が動くと、顧客から「どこで作っているのか」「関税はどうなるのか」と聞かれる場面が増えます。営業担当がその場で曖昧に答えると、信頼を落とします。製造国、最終組立国、部品の主要調達先、証明書の有無をあらかじめ確認してください。輸出商社やメーカー営業では、原産地を営業資料の末尾に置いたままにしないことが重要です。
南米向け提案では、価格表とは別に、関税、原産地、納期、保守体制を1枚で説明できる資料を用意します。購買担当が社内稟議で使える形にすると、営業後の比較で残りやすくなります。
日本企業が打ち出すべき提案
価格勝負だけにしない
欧州企業の関税条件が改善しても、日本企業がすぐに不利になるとは限りません。南米の顧客にとっては、故障時の停止時間、修理部品の入手、技術者の育成、現地通貨の支払い条件も大きな判断材料です。営業資料では、導入時の価格だけでなく、3年または5年で見た運用費を示しましょう。長く使うほど差が出る価値を数字と運用手順で見せることが必要です。
- 保守費用を年単位で示す
- 部品供給の標準リードタイムを示す
- 現地代理店の対応範囲を明記する
商談前の質問を変える
これまでと同じ製品紹介では、買い手の比較表に埋もれます。初回商談では、予算を聞く前に、比較対象、輸入時の制約、保守で困っている点を聞くべきです。とくにブラジルやアルゼンチンでは、輸入実務と国内流通の条件が案件ごとに違います。営業側が聞く順番を変えるだけで、価格だけの競争から抜けやすくなります。
また、南米向けでは、現地代理店が持つ業界別の人脈も重要です。代理店が食品、医療、鉱山、公共調達のどこに強いのかを分けておくと、協定後に強まる欧州勢との比較でも戦いやすくなります。代理店評価を売上額だけで見ず、見積回答の早さ、技術質問への戻し、失注理由の報告精度で見直してください。
よくある質問
日本企業はEUメルコスール協定を直接使えますか?
直接使える協定ではありません。日本企業が見るべきなのは、欧州企業の条件が変わることで、南米の顧客がどのような比較を始めるかです。自社の原産地や供給体制を整理し、競合比較に備えることが実務上の対応になります。
どの顧客から確認すべきですか?
まずは更新時期が近い既存顧客、欧州メーカーと競合しやすい機械、部品、医療関連の顧客です。価格差だけでなく、保守、納期、在庫、現地対応の評価を聞くと、次の提案を作りやすくなります。
参考情報
参考: European Commission, The EU-Mercosur trade agreement
参考: JETRO 海外ビジネス情報
最終更新日: 2026-05-15



