安全保障貿易管理【ますます注意が必要な時代へ】輸出の前の注意点

日本国旗

今や「輸出」は日常的に行われています。
しかし、輸出が法律で規制される事があります。

その法律の1つが「外為法(がいためほう)」です。

先進国が持つ高性能な製品や技術は、テロリストや兵器を開発する国に渡った時、核兵器や化学兵器といった大量破壊兵器の開発に使われるおそれがあります。

そういった活動を行うおそれがある者に渡らないようにする為、外為法に基づいた「安全保障貿易管理制度」があります。

外為法とは?

安全保障貿易管理【ますます注意が必要な時代へ】輸出の前の注意点

高品質な物や技術がテロリストなどに渡る事を未然に防ぐ為に日本では外為法(法律第二百二十八号「外国為替及び外国貿易管理法」の略称)に基づいた「安全保障貿易管理制度」を行っています。
外為法の規制に該当する製品、技術の輸出には経済産業大臣の許可が必要になります。

1.規制対象

シャンプーや傘、釣り竿といった日常的な物に使われる材料が規制対象となる事があります。
商品そのものは規制対象ではないのですが、製品の製造過程で原材料として規制対象品が使われています。

例えば、シャンプーの原材料の1つにpH調製剤が使われている事があります。
pH調製剤は「トリエタノールアミン」という物質が使われており、トリエタノールアミンは化学兵器の原材料になる可能性がある為、規制の対象となります。

また傘や釣り竿にも規制対象の「炭素繊維」が原材料に使われています。
炭素繊維は鉄の1/4の重さしかないが強度が鉄の10倍もあるという事で、車や航空機の軽量化及び高性能化に貢献しています。

ただ一方で、高性能であるが故にミサイルの材料(構造部材)に使用されていしまう可能性があるので規制の対象となっています。

このように身近な製品の材料が軍事転用可能な物は数多くあります。
安全保障というと何か遠い物のような感じがしますが、実は身近な問題であるという事に気付く事がとても大切なのです。

輸出をする場合、規制対象は大きく分けて「物(貨物の輸出)」と「技術の提供」の2つがあります。

a)「物」貨物の輸出について

以下のような事も規制対象となる事がある為、注意が必要です。

・飛行機に手荷物で持ち込む
・海外の子会社に輸出する
・修理の為海外に送る
・無料サンプル添付する

b)技術の提供

海外で現地の人に直接教える場合はもちろんですが、国内で教えた場合も規制の対象となる場合があります。
例えば、日本に居住していない外国人が物の作り方や使い方を教わった場合、自国に帰る際に提供を受けた技術も一緒に持っていく事になります。

また、海外の企業に研究機材を発注する際に仕様書を送る事なども内容によっては規制対象の「技術提供」となる可能性もあります。

このように、海外に物の輸出を考えていなくても外資系の会社や海外展開している会社と取り引き関係があると規制対象となる「技術の提供」が発生する可能性があるので注意が必要です。

2.罰則

外為法の規制に該当する物を輸出する場合、経済産業大臣の許可を取る必要があります。
外為法に違反した場合は以下のような罰を受けます。

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刑事罰
10年以下の懲役
1000万円以下の罰金

行政制裁
3年以内の物の輸出・技術の提供の禁止
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また、報道されれば企業イメージの悪化など計り知れないダメージを被る可能性があります。

手続きの流れ

安全保障貿易管理【ますます注意が必要な時代へ】輸出の前の注意点

輸出する場合は「リスト規制」「キャッチオール規制」2つの規制を意識し、何を輸出するのか、誰に対して輸出するのか、またその用途を明確にしておく必要があります。
この2つの規制が安全保障貿易管理の要となります。

1.【リスト規制】(該非判定)→ 何を?

リスト規制とは、武器や大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれが高い貨物や技術の名称を経済産業省でリスト化した物です。

「1武器」「2原子力」「3化学兵器」「3の2生物兵器」「4ミサイル」「5先端材料」… のように15の項目がリスト化され細かく書かれています。
例えば、先ほど規制対象品の事例で上がったシャンプーのトリエタノールアミンは3化学兵器(1)の「軍事科学製剤の原料、軍用科学製剤と同等の毒性の物質・原料」で規制をされてます。

インターネットで「安全保障貿易管理」を検索すると経済産業省のホームページに移動できます。
そこで「申請手続き」を選ぶと流れを記したフローチャートが表示されます。

リスト規制の項目から調べる事が出来ます。
リスト規制に該当する場合はどのような使用目的であっても、輸出する際は原則、経済産業大臣の許可が必要となります。

2.【キャッチオール規制】→ 誰に? 用途は?

キャッチオール規制とは、リスト規制に該当しないが用途や需要者などから武器や大量破壊兵器の開発等に用いられるおそれがある場合に許可が必要となる制度です。
リスト規制に該当しなくても、輸出先がホワイト国でない場合にキャッチオール規制の対象となる可能性が出て来ます。

ホワイト国とは、日本のように各国際輸出管理レジームに参加し輸出管理を厳格に実施している国の事で、現在27カ国あります。

ホワイト国以外に輸出する場合、その用途や顧客を確認する中で軍事用途に転用されるおそれがある場合はキャッチオール規制の対象となります。

例えば、荷受人やエンドユーザーが大量破壊兵器の開発を行っている場合はキャッチオール規制に該当します。
海外の荷受人、エンドユーザーに至るまで取り引き相手の事もしっかり調べていないとダメージを被る事があります。

大量破壊兵器の開発等への関与が懸念される企業、組織を「外国ユーザーリスト」として経済産業省のHPで公表されています。
このリストに公表されている企業に輸出や技術の提供を行う場合は、大量破壊兵器の開発に用いられない事が明らかな場合をのぞいて経済産業大臣の許可が必要になります。

最後に

安全保障貿易管理【ますます注意が必要な時代へ】輸出の前の注意点

物、技術そのものがリスト規制に該当する場合はもちろん、用途、顧客を良く確認して輸送経路が不自然でないかを確認して下さい。
不自然な点があったら必ず経済産業省に相談するようにして下さい。

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